SOPP2017

 5月14日(日)、富士聖地で多宗教間対話の祈りのセレモニー「Symphony of Peace Prayers 〜宗教・宗派を超えて、共に世界の平和を祈る」が行なわれた。

 午前9時。門から車やバスが続々と入場。全国各地から集まってきた人々の年齢層は広範囲におよび、なかには3世代にわたる家族連れも。そのめいめいが、手に今日の祈りが収められたパンフレットと国旗カードを携えている。

 展示パネルに見入る人、お買い物をする人、再会を喜び合う人など、会場周辺はにぎわっている。

 

 会場へと向かう道の両脇には、193本の白いポールが参加者を迎える。一見どれも同じようだが一本一本をよく見ると……各国の言語で「世界人類が平和でありますように」「○○国が平和でありますように」としるされている。これはピースポールという多角柱。さまざまな言語が奏でる無音のシンフォニーの中、会場へと続くスロープを進んでゆく。

 

 

 会場を前にして、小さな看板の存在に気づく。そこには次のような言葉が。

 「富士聖地では、1980年の開設以来、ほぼ毎月、雨の日も、風の日も、雪の日も、暑い日差しの日も、野外に数千人が集い、ひとえに世界人類の平和を祈る祈りが捧げられてまいりました」

 いよいよ会場に足を踏み入れる。この新緑の牧草地が今回の祈りの中心地となる野外会場だ。周囲には銀色のポールが立ち並び、突端に色とりどりの国旗が揺れなびいている。先ほどは世界各国の白いポールだったが、今度はそれらがカラフルな国旗となって生き生きとはためいているのが目に鮮やか。

 

 

 

 空の高い場所から、森の奥深くから、すぐそばの梢から……ここではたくさんの鳥のさえずりが聞こえる。空に透明な模様を描いては小さく囀り、遠くに消えてゆく鳥たちも、この壮大なシンフォニーの一部だろうか。

 SOPPの舞台に設置されているのは行事名の刻まれた小ぶりのパネルで、その向こうにカラフルな国旗と空が広がる。だが、祈りの舞台はここだけではない。舞台から180度目を転じてみよう。この行事の主役は野外と別会場で参加する一人一人であり、世界各地で共に祈る一人一人なのだ。



 

 SOPPにリンクした祈りの会を自主開催するという連絡は、世界数十ヵ国から続々と届いている。そして、インターネットのライブ配信で参加する方々も、この会場の参加者と同様、パソコン画面の前で行事の開始を待っている。

 

 


 10時10分。幾重にも輪をなしていた人々の波紋は静まり、行事の幕開けを控えた野外会場は静かな湖面のよう。一人一人はパンフレットと国旗カードを手許に用意し、祈りの準備は万端である。上空に広がる雲の陰影と、香りをくゆらせる薄緑の草原。また、見えないけれど、祈りでつながる世界中の人たちがいる。境界線のない空に祈りが響きわたるのは、もう間もなくだ。

 

 

 開会宣言が高らかに会場に響いた。まず白光真宏会理事長・納谷智彦が会場の一万人の参加者と、インターネットを通して参加している人々に向けてSOPP の趣意説明を行ない、続いて会長・西園寺昌美が、今ここで心を一つに祈りを発信すること、それは世界を変える瞬間なのであると述べた。


 

「ここ富士聖地ではかって、苦しみ、悲しみがなくなるよう、願望、望みを叶えてもらおうと祈っておりました。でも、祈りを重ねるうちにそれが一切無くな り、光明の言葉、感謝の言葉のみの場になったのです。自分を信ずること、お互いに尊敬し合い、助け合い、支え合い、協力して平和な調和の世界を導いていく 光明の言葉のみが発せられる場になったのです。ですから、皆様がここへ肉体を運んだ瞬間、天地すべてがワンネスになって、大宇宙の法則、宇宙神と神性と 個々人の神性が全く一つにハーモナイズし、世界を変えていくのです。今の世界の瞬間を変える、そのために皆様はここに存在しておられるのです。大きなミッション、神性が開かれるチャンスなのです」

 会長挨拶が終わると、白光真宏会メンバーによる印が披露された。厳かな音楽の中、袴姿のメンバーが通路と舞台で扇を広げ、舞を披露した後、人類すべての神性を讃える印を組んだ。

 

 

 続いて、メイン・プログラムの一つである各宗教・宗派の平和の祈り。今年は7つの宗教の祈りが披露された。
 それぞれの宗教に伝統や由緒があり、風土や場面が織り込まれたさまざまな祈りが存在するが、SOPPで披露されるのは同じ一つのテーマの祈りである。すなわち、それぞれの宗教の「平和の祈り」を披露し合い、祈り合うのである。

 

 

 

 「平和」という共通基盤でつながり合う感覚と、「平和」という一つのテーマでこれだけ多様なひびき、言霊が織りなされるという驚き。これら二つの感覚が共存していることを肌で体験できる、これはまたとない機会でもある。
 各宗教の祈りをリードしてくださる宗教代表者は壮大なシンフォニーのコンダクターのような存在で、移ろい転調する平和の祈りを、心を込めて祈り上げてゆく人々と共に、この行事は刻々と創り上げられてゆく。


 

 続いては、二つ目のメインとなる富士宣言のプログラムだ。

 初開催から10年の時を経て、2015年のSOPPは平和な未来のためのイニシアティブ「富士宣言—神聖なる精神の復活とすべての生命が一つにつながる文明へ向けて」発足式の受け皿となった。
 そして翌16年のSOPPでは、富士宣言のプログラムは「ソウル・オブ・ウィメン—神聖なる女性性の復活」グローバルキャンペーンへと歩を進めることになった。
 「富士宣言」を通して、我々の目指す未来が見えたのが第一ステップだとすれば、この「ソウル・オブ・ウィメン」は第二ステップと言えよう。すなわち、我々が目指す未来を実現するにあたって、今の世界に欠乏している要素・世界が必要としている要素は何か? という問いかけへの答えの一つが「神聖なる女性性の復活」であったのだ。
 

 今年はその系譜で、さらに時代が先に進んだことを示す第三ステップが。それが「神聖なる女性性と男性性の融合」のプログラムである。
 「神聖なる女性性と男性性」の調和とバランスを取り戻すことにより、「精神と肉体」「自然と人間」「現在と未来」「内と外」など、相対的とも取れるがじつは表裏一体にある二つの要素を調和させようというものだ。2017年のSOPPでは、このテーマのもと思いやエネルギーを重ね合わせ、富士宣言の描く未来を実現させようと、海外から来日したゲスト20数名が心に沁みるメッセージを会場に語りかけた。
 この時登壇した人々は、SOPPの2日前に東京で開催された富士宣言シンポジウムに参加していたメンバーで、会場の参加者と会うのは初めての方が大半であるのに、まるで親しい人との邂逅のように、いとおしさと敬意をこめて感謝を伝える姿が印象的だった。

 



 その余韻の中、女性性と男性性の調和を芸術で現わすプログラムへ。プロのオペラ歌手お2人による「みんな輝くディバイン・スパーク」である。最初はお2人で歌声を披露。

 


華やかさと重厚さのハーモニーを心ゆくまで味わった後、会場の参加者も一緒にこの歌を伸びやかに歌った。一つになった声が樹々のさやぎに、風に、草原に、木漏れ日に吸い込まれてゆく。

 

続いて、この日に届けられたたくさんのメッセージの中から、ポルトガルから寄せられたメッセージの紹介があった。

 次に韓国からSOPPに駆けつけたゲストが、自身の活動を紹介しながら平和への思いを語った。

 

北朝鮮と韓国の国境付近に平和の学校を創設し、教育を通して子どもたちに対立ではなく平和を伝えつづけるピーター・ジソク・ジャン氏の体験談。その重い言葉からにじみだすのは温かな希望であった。


 「皆様、会場後方をご覧ください」という司会の呼びかけに、振り返る会場の参加者たち。いつの間にか通路に国旗がずらりと整列している。次の瞬間、会場に勇壮な音楽が響きわたり、国旗が続々と入場を開始。それぞれ建国の理念を象徴する絵柄を風に踊らせ、颯爽と参加者の間を進んでゆく。
 いよいよ舞台で「世界各国語による世界各国の平和の祈り」が始まる。まずは西園寺里香副会長がこの祈りを説明。

 

 

「祈りは元々、願いを叶えるためではなく、神様へ感謝と喜びを捧げる歌であり、自分の神性を思い出させてくれる大切なツールであります。多くの人の平和の祈りが重なることによって、忘れている本来の神性が蘇ってまいります」

 そして「世界各国語による世界各国の平和の祈り」がスタート。音楽に合わせて舞台左右の袖から国旗が次々と現われ、ボイスリーダーが国名を唱えると、その国の国旗がはらりとほどけ、絵柄が参加者に示される。参加者は凛と掲揚された国旗を見つめ、その国の言語で「平和」と一言、唱える。その国の人々に、その国の大地に、自然に、動植物に届くように……心を込めて唱えた時、「平和」という言葉もまた祈りなのだ。

 


 その間、会場のあちらこちらに国旗をプリントしたカードを掲げる方々の姿が。参加者全員に世界中の国旗カードが配られ、誰もがいずれかの国を担当して国旗を掲げて祈ったのである。
 そしてついに193ヵ国の祈りが終わり、最後に「その他のすべての地域」の平和を祈り上げ、「May Peace Prevail on Earth」と唱えた。その瞬間、参加者は一斉に国旗カードを天に向けて掲げる。会場を埋め尽くす国旗は、世界のあらゆる色が融け合う湖面のよう。



 その後、大地、山、海……私たちを取り巻くさまざまな事象に対する感謝の祈りを行ない、一体感がさらに深まっていった。

 最後に、西園寺由佳会長代理が閉会挨拶を行なった。

 

「未だ宗教は多くの争いの原因となっており、多くの国家間の紛争も止むことを知りません。世界は分断、対立、さまざまな対極化が進んでいます。でも一番大事なことは、今に意識を向け、自分がどこに力を注ぎ、何を選択するのか。その人類一人一人の決断と決定が世界を創り上げるということです」

 

 再び国旗入場の音楽が流れ始め、国旗が華やかに登場。舞台の階段を次々と降り、会場の中に入ってゆく。やがて舞台にアースフラッグが登場し、アースフラッグの動きに合わせて、会場の国旗もゆっくりと旋回しはじめた。世界を祈りのベールで包んでゆく旗の動きとともに、セレモニーが終わりを迎えようとしている。

 

 

やがてすべての国旗が高々と掲げられた時、誰からともなく会場の参加者も次々と国旗カードを空に掲げ、カラフルな国旗の湖が広がった。一体感の中、大きな拍手が響きわたる。こうして第13回SOPPは終了した。





このセレモニーの模様は、YouTubeのアーカイブ配信でご覧いただけます。
https://www.youtube.com/c/symphonyofpeaceprayers


※ SOPPは“会場参加型”の行事となっており、舞台とご来場の皆様が一体となり、お祈りや合唱等をしていただくシーンがございます。
内容は以下のPDFでご覧いただけます。
プログラム2017
各宗教・宗派の平和の祈り
ソウル・オブ・ウィメン「神聖なる女性性の復活」
ディバイン・スパーク(合唱)
世界各国語による世界各国の平和の祈り2017
地球生命への感謝